ソフト開発技術者不足?

ソフト開発技術者、特に組込み系の技術者が不足しているという話。

2月5日(火)放送
ソフトウエア危機
〜誤作動相次ぐハイテク製品〜

扉が開いたまま上昇し始めたエレベーター。突然2万トンの水を放流したダム。メールの作成中に電源が切れる携帯電話。今、組み込まれているコンピューター・ソフトの欠陥で機械がトラブルを起こすケースが相次いでいる。経済産業省の調査では今や製品の不具合の最大の原因がソフトの欠陥であることが判明。トラブル多発の背景には、電子機器の高機能化によってソフトの分量が急増したこと、そして開発を担う技術者の不足があるといわれる。
電子化が急速に進む自動車業界では、高性能で競争力のあるソフトを作り上げるため、競合メーカーがソフトの一部を共同で開発し始めた。"ソフトウエア危機"をどう乗り越えるのか。浮き彫りになった課題を検証する。
(NO.2532)

スタジオゲスト : 西 康晴さん
    (電気通信大学講師)
クローズアップ現代 NHK より。






日本のものづくりで、電子化が進む中で不具合が沢山発生して困ったことになったということでしょう。

日本のソフト業界は、単に人が不足しているから増やそうという発想で駄目にしてきたのにまだ分かっていないことに愕然としました。
今日は生産性の低い方法を続けている日本のソフトウェア業界についての苦言です。


組込み系のソフトの開発ができる技術者が非常に少ないことは日ごろ感じています。電気・電子や機械、マイコンアーキテクチャを理解してプログラミングができる技術者とか、これらの知識・経験が豊富なプロジェクトマネージャは確かに不足しています。特に根っこから分かる技術者が減ったという気がします。


この問題の根本には、義務教育とそのあとの教育課程、企業内の人の育て方(キャリア)、に問題があると思います。

現状、理工系大学志願者が減っていて、恐らく高専・工業系専門学校・工業高校の志願者はもっと減っているので技術者になろうという若者が減っているはずです。機械系が敬遠されだして、電気・電子系も人気がなくなり、そして今ではIT系も不人気になりました。業界の厳しさ、悪いうわさはインターネット、特に掲示板やブログを介してすぐに伝わります。


勉強する内容、受験科目が理系は多いのにもかかわらず、センター試験は理系も文系も共通の試験です。そのため、同じ能力のある受験生が文系と理系をそれぞれ目指したと仮定すると、総受験対策時間が同じ場合には文系科目の点数では理系は負けてしまうでしょう。

学校名だけで評価される時代ではなくなったとはいえ、将来明確にやりたい事が決まっていなければ、親や進路指導の先生はとりあえず志願校を理系よりも文系の学校にして1ランク上げたいと思うものです。

個々のケースはいろいろあるでしょうが、トップになれる人は文系出身、理系は管理される側という構造にも問題があると思います。特にソフトウェア開発では上流工程が偉くて、下流工程は使い捨てという意識が強いです。


さらに業界の構造を詳しく見ると、問題の構造が見えてきます。
従来からソフトハウスや企業のソフト開発職は、多くの企業が人手不足も手伝って学歴、学部不問の採用を行ってきました。業界の習慣として人月、ソースコードのライン数などがプロジェクトの規模を表す単位になっているため、元請は下請けを使って、大量の人員を投入し、大量のソースコードを作成して納入することが行われてきました。なぜ人手不足なのか、その一因は、仕事がある限りこの業界は人を投入してプロジェクトの規模を大きく見せようとすることにあるのです。

仮に優れたプログラム部品(API)を使って仕事をすぐに仕上げる技術者がいたら、そういった会社があったら、その技術者の生活が豊かだと思いますか? それが日本の会社の社員だったら貧乏でしょう。 仕事の時間が少ないので社員の給料は少なく、人月で受注するプロジェクトでは短期で仕上げられるのでその会社は安く買い叩かれてしまうでしょう。

では逆の場合を考えましょう。品質の悪いコードを書く技術者、やまともにコーディングできないプログラマの大勢いる会社では、どんなプロジェクトでも大人数で長期間、時間をかけて取り組みます。ソフトには毎回問題がたくさん見つかるので直すのに毎回時間が掛かります。この会社や技術者が豊かな生活ができているのかは別にして(たぶん厳しい状態でしょうが)、売上げは上がっていることは間違いありません。

このような業界の構造が変わらない限り、ソフト開発技術者不足は収まらないでしょう。


我々のグループは、これからも少数精鋭で高成長する方法を模索していこうと思います。