景気悪化期にとってはいけないリストラ・コスト削減

 景気回復期においていち早くV字回復を果たしている企業、過去最高業績をたたき出す企業を見ていると景気悪化期に無理なリストラやコスト削減をしていないことが根底にあるようです。元々、主力事業における利益率が高く、損益分岐点が低いので、景気悪化に伴う需要減少に耐えることのできる体質であるわけです。一方で、景気回復期においても景気悪化期と同様に売上・利益とも横ばいだったり、まだ減収減益を続けている企業を見ると景気悪化期にリストラ・コスト削減を実行していることが多いのです。景気悪化期に事業売却や工場・設備などを売却したり、人員を大幅に削減したらどうなるか、時勢が悪いため事業の売却益はほとんど出ることはなく赤字が嵩み、リストラには退職金の上積みなどの経費がかかります。そのため累損が大きくなり、業績を回復させるための経営資源を失っているために景気回復期にチャンスを逃してしまいます。一方、この景気悪化の苦しいときに、工場を買い取ったりリストラされた他社の優秀な社員採用した会社はその後、景気回復期で大きな成長を果たしています。

 景気が悪くなったときに「ピンチはチャンス」という経営者がいますがこの解釈には2通りあると思います。自社がピンチになっていたらチャンスじゃないんです。他社がピンチで自社が買収したり、シェアを拡大して市場を奪うつもりならチャンスです。しかし、だめな経営者は自社がピンチで他社から見たらチャンスを与えてしまっていることがあります。つまり、市場拡大をえらっているライバルがたくさんいるときにリストラ・コスト削減をして、他社に負けることです。

 本当にできる経営者は業績が良く、景気も良いときに、リストラやコスト削減をします。今後成長がないと判断した事業を売却するとしても高値で売却できますので売られた事業をしていた社員も見捨てられたとは思わないでしょう。そして、運悪くリストラされた社員がいても、好景気であれば容易に転職できますし、他社に高額で買収されるような事業をしていた部門の人材であれば必要としてくれるところがあるはずです。

 だめな経営者は不景気に赤字の大きくなった事業を損切りのために売却したいとか大幅にコスト削減しようと考えます。事業運営の損益分岐点が高く、事業を継続するための運転資金が多くかかるため、早く事業を止めなければなりません。しかし、売却しようにも引き受け先はなかなか見つからず二束三文に買い叩かれてしまうのが落ちです。そうなると、赤字を出さないように無理なコスト削減に勤しむ様になりますが、赤字を出している事業には必ず問題を抱えています。市場に強力なライバルがいたり、過剰な設備や人員を持ち減価償却費の負担や人件費の負担が重くなっていたりといろいろです。経営者はもともと景気判断や経営環境の読み誤りがあったということです。このようなときに、悪い判断をもう一度してしまいます。それは、設備や人員をライバルへ売ることです。そうしたら、もう二度と勝てないということは素人目にも明らかです。

 事業の売却益で新たな事業を始めるのであれば、大きくリスクを取れます。しかし、だめな経営者は少なくなった資本で経営を続けければなりません。当然、新規事業のリスクはあまり取れないです。