安物買いの銭失いの王道「ペニーオークション」

家電製品・ゲーム機などを極めて安価に購入できると広告している「ペニーオークション」や「激安オークション」が日本でも幅を利かせ始めているのをご存知でしょうか?

ペニーオークションはインターネットオークションの一種ですが、ヤフーオークションのような出品者が手数料を負担するのではなく、落札希望者(入札する人)が入札するごとに手数料を払う仕組みのオークションです。

商品購入のためにオークションに登録した時の登録料、入札するたびにかかる入札手数料(30円〜100円程度が多い)を払うシステムになっています。

このシステムでは、商品を買う側の顧客が払う費用が、商品価格である落札価格+入札手数料となっている点です。1度の入札で数円しか落札価格を上げる事ができないなど頻繁な入札を行わせる仕組みになっています。

モデルケース:
市価5万円の液晶テレビペニーオークションで落札しようとした場合、次のように設定されていたと仮定します。

開始価格:1円
数量:1台
入札手数料:50円
入札期間:5日間

この場合、最初はぽつぽつと入札されていき、予定の終了時間間際になると1件の入札があるたびに入札期間が伸ばされていきます。価格は入札期間終了間際でも2〜3万円程度しかなっていないため次々と入札者が現れます。最終的にはのべ1000回位の入札が行われました。

オークション主札者側が得る入札手数料の総額は50,000円にもなっています。
落札者は落札価格と送料の3万円を払うことになり、オークション主催者は8万円の売上になります。
運よく落札できた人は本来5万円程度で市中で買う商品が3万円で入手できたので得したと思うでしょう。
落札できなかった多くの人は、例えわずかとはいえ買えない商品を買うために支出があったので損をします。

このペニーオークション、主催者側が圧倒的に有利ですね。格安商品をエサに会員を集めて何度も入札をさせることで1つの商品を1個売る以上の利益を上げる事が可能になります。

そして、このペニーオークションシステム、主催者が悪用しようとするといろいろできてしまいます。簡単に言ってしまうと、落札された商品が購入されない状態が最大の利益を生み出します。つまり、入札だけさせて最後は主催者側が操作をして実体のない人が落札したことにしてその案件を終了させてしまうのです。もともと入札終了時刻には入札が殺到するので、そこに紛れ込ませるのです。
いってみれば架空オークションです。実体がないのです。ちょっと前には絶対出会えない「出会い系サイト」を運営していて逮捕された犯罪者やネット賭博サイトでほとんど勝てない状態のシステムでつかまった犯罪者が出ましたが、これもそのうち絶対落札できない「架空オークション」が出てくるでしょう。

まあ、そこまで悪質ではないにしろ、商品原価以上に、入札手数料と落札価格が競りあがるまではオークションを成立させないように操作することは簡単です。一度始めたオークションを途中で終了させるような場合には、手数料の返金を求められてしかりですが、ネットでは実際に誰が落札したか分からないので不正がしやすいのです。

私がこのペニーオークションに疑問を持ったのが、SPAMメールやアドセンス広告で大量にアクセスを誘導しようとしていたのを見た事、そして落札価格だけを大々的にアピールして激安で落札できることを強調していたことから詐欺的な匂いを感じたのです。

日本には現在のところ、オークションのような市場を規制したり、健全に運営することを監視する法律がないため、このビジネスはかなり黒っぽくても黒にはならない危険なビジネスとして展開ができてしまいます。おそらく事件が多発して、社会的な機運が高まるまで対策はされないでしょうから注意したほうがいいと思います。

少しのお金をケチる人は銭失いしやすい人ですよ。普通に買える商品を買うのにオークションに時間を費やすのは無駄です。商品購入のための時間的なコストも馬鹿になりません。オークションの好意そのものが楽しみになってしまう人には言っても無駄でしょうけど。


日経ビジネス 第42回:入札を競う「ペニーオークション」の実態とは?